JP- 話題のAIアーティスト&チュートリアル: Citrus (@AI_Illust_000)

はじめましてのご挨拶
皆さん初めまして、シトラスと申します。
私は日本に住んでおり、普段から画像生成AIを用いてさまざまなイラストを作っています。
2022年の10月頃、NovelAIは日本でも大きな話題となり、非常に多くのユーザーがAIでイラストを作るようになりました。
私もそのうちの1人で、当時NovelAIほどの品質のイラストを作れる画像生成AIは他に例がなく、多くの人が未知の体験に夢中になっていたと記憶しています。
そんな一大ムーブメントの中で、画像生成AIを用いて作られたイラストを品評する、第1回 AI画像コンテスト(https://blog.novelai.net/ai-contest-pre-exhibit-d7448e46e96f)が開催されます。
投票によって選ばれた上位入賞作品は横浜の展示会で公開されるというもので、その応募総数は2000作品を超える、非常に大きな規模のコンテストです。
私の作った作品は奇しくも高く評価され、優勝という喜ばしい成績を収めました。
コンテストはNHK(日本放送協会)の番組内でも取り上げられ、大きな注目を集めたと言えるでしょう。
そんな私ですが、それまでは芸術や創作とはあまり縁のない生活を送っていました。
日本の文化であるアニメやゲームを鑑賞する事は、大好きです。
けれども、自分で絵を描いたり、なにかを作るという経験はほとんどありませんでした。
その理由の一つが、障害です。
私は19歳の時に統合失調症を患い、21歳の時には心疾患も見つかりました。
幸いな事に適切な治療を受けることができて、症状を抑えて日常的な生活が送れています。
けれども、その治療のために軽い手の震えが出てしまう事があります。
絵筆を握って線を引くような、繊細な作業は私にはできるはずがないと思い込んでいました。
生きていく事で精一杯だった私は、自信を完全に失い、自らになにができるのかも分からない絶望の淵にいました。
そんな折に出会ったのが画像生成AIです。
これまでの方法とはまったく異なる、文章やタグで説明する事でイメージを形にする新しい表現方法です。
この方法であれば、特別な訓練を必要とせず、私でも扱う事ができる。
生成AIというツールを用いる事で、私は初めて頭の中のイメージをイラストという形にする事ができるようになりました。
画像生成AIというツールの存在は、これまで私にはできないと思っていた事を可能にしてくれた。
特別な技能は必要なく、アイデアさえあれば頭の中に思い描いたイメージをイラストという形にする事ができるのです。
きっとこれから先のそう遠くない未来に、画像生成AIを通じて、これまでの常識に囚われない、新しい世代のアーティストが登場します。
それはこれまで芸術に無縁であったり、さまざまな理由でを目的や目標を失った人の中から生まれるのではないかと、私は予想しています。
ハンデを抱えていたり、特別な才能を持っていない人間でもスタートラインに立つことができる。
生成AIはこれから先の未来も人間を補助し、可能性を広げるためのツールになるべきだと私は考えています。
さて、自己紹介と前置きが長くなりました。
今回は私が作品を作る上でのワークフローの一部を紹介します。
Text to Imageを用いたワークフロー
私は基本的にはText to Image(T2I)を用いてイラストを制作します。
これはタグや文章を用いた命令でイラストを制作する、現在の生成AIでは最も標準的な手法です。
これらはNAID3の先行テストの際に作成した、T2Iを用いて制作したイラストです。
T2Iで私が制作する上で意識している点を踏まえながら、イラストを作る過程を解説します。
T2Iでイラストを作る際に重要なのは「作りたいイメージがどのような特徴を持っているか?」を整理する事です。
そしてその特徴をタグやプロンプトと呼ばれる形で、AIが理解できる言語で並べていく作業になります。
私が作りたいと思っているイメージを整理するとこのようになります。
天使のような姿のアンドロイドの少女が破壊されている。
激しい戦闘などの破壊されるに至った背景を連想させるため廃墟のような場所が描かれている。
人間に近い姿でありながら機械である対照的な要素を持たせるためパーツの一部は人体を模したものが望ましい。
これをさらに分解して、NovelAIに通りやすいタグに分類したのがこれらになります。

ここまで情報をタグとして整理できたら、あとは実際に出力をしながらタグの並べ替えと重みづけを繰り返して微調整します。
タグは組み合わせによって表現が破綻する事があるので、なるべく関連度の高い要素で揃えるのもひとつのコツです。
そうして完成したのがこちらのイラストになります。
実際に使われたプロンプトの設定はこちら。

NAID3はとても性能が高く、T2Iだけでも非常に幅広い表現が可能です。
かっこいいロボットから可愛い女の子、抽象絵画までイメージ次第であらゆるイラストを作ることができます!
……それでも、表現の内容によっては限界があります。
そこで次はImage to Image(I2I)を用いたイラスト制作のワークフローを解説します。
Image to Imageを用いたワークフロー
唐突ですが、これは「彩」という漢字で、色鮮やかな様子や色とりどりに色を付けるという意味があります。
読み方は「AYA」や「SAI」などですね。
日本の方には馴染みのあるものですが、そうでない方には奇妙な形に見えるかもしれません。
日本の漢字の多くは象形文字といって、ものの形を象った記号になっています。
「彩」という漢字は「采 + 彡」の2つの要素から成り立っています。
右側の「彡」
こちらは長い髪が靡く様子を描いたものです。
ここから色とりどりの木の実の中から長い髪の女性が選んで摘み取る、転じて鮮やかな色をつけるという意味を持つようになったのが「彩」という漢字です。
たった一文字ですが、その中には歴史があり、漢字という形そのものに意味があります。
それでは、そんなメッセージ性の詰まった漢字を模した形のイラストを作りたいとなったら?
結論から言うと先程のT2Iという手法では不可能です。
そこでこれから紹介するのがImage to Image(I2I)を用いた方法となります。
そのために必要となるのが、ノイズ素材です。
これはI2Iを用いてイラストをただのノイズに近づけて、一度出力したものになります。
複数の色が重なり合った状態なので、あらゆる色に変化しやすい特徴があります。
ノイズ状のイラストを出力して素材として活用するメリットは3つ。
1つは構図など難しい部分をAIに任せてアイデア出しができる点。
もう1つは外部ツールを用いた加筆や編集が容易な事があげられます。
最後の1つは今回は使いませんが、意図的にイラストの中に破綻やノイズ感といった抽象的な要素を残す事ができるのもメリットです。
そこで今回はNovelAIを用いた、ノイズ素材を用いた作品創りのアイデアの共有として。
“文字のように見えるイラスト”の作り方を紹介します。
ノイズ素材の作成
下準備として、I2Iに使用するノイズ素材を作ります。
適当なイラストを用意し、以下の設定でI2Iを実行する事でイラストをノイズに近づけます。
Strength:0.01
Noise:0.99
この処理を数回繰り返し行う事で、よりノイズに近づき、I2I用のノイズ素材が完成します。
ノイズ素材の加工
作成したノイズ素材を文字の形にクリッピングします。
この作業はペイントツールを用いるとよいでしょう。
ノイズ素材を加工する上での考え方としてはこのようになります。
ノイズ部分 → 様々な色に変化しやすい領域
塗りつぶし部分 → 色が変化しづらい領域
意図的に色が変化しやすい領域を狭める事で、出力結果をコントロールする狙いとなります。
加工された文字型ノイズ素材をI2Iする事で、文字のように見えるイラストを作ることができます。
I2Iでの出力
文字型ノイズをI2Iにセットし、StrengthとNoiseの値を微調整する事で出力結果をコントロールします。
Noise値は0でOKです、ここで特に重要なのはStrengthの値。
低く設定すると文字の形を保った出力に、高く設定するとイラストとしての出力の安定度が増します。
この手法でイラストを作る際、私は0.8〜0.9の間で調整する事が多いです。
描画できる範囲を意図的に狭めているため、出力は非常に不安定なものになります。
何度も根気よく微調整と出力を繰り返しましょう。
そうして完成したのがこちら。
「彩」という漢字を象った、木の実を収穫する様子を描いたイラストです。
ノイズを自作してのI2Iは今回紹介した他にも、様々な使い道があります。
アイデア次第で応用ができる手法だと思いますので、ぜひ試してみてください。
今後のAIアートについては、私のツイッターをフォローよろしくお願いします。https://twitter.com/AI_Illust_000